気を付けていること

病理診断するにあたって、

 

①急ぐ

②何か他のことを気にする

③体調が悪い

 

これらの時は要注意です!!普段ではありえない、とんでもないミスをしがち。

なので、少しでも難しいと思うものには無理にその時に診断せず、再度見るようにしています。

 

上記以外でも、AかBで悩むようなものは、標本を逆にしてみたり、見る順番を変えて見たり、日を変えて見たり、しています。

 

直前に、何を見たか、どんな講習を受けたか、でも思考回路が変わってたりします。こういう現象を感じると「絶対的」と「相対的」といった言葉を考えたりします。

Pathport

以前紹介した新しい取り組み。大成功していると思っています。

現在では臓器専門性の強い分科会が複数立ち上がり、レクチャー形式のものや若手が引っ張るものもできました。「若手が積極的に会を立ち上げる」というのは素晴らしいことです!!!

個人的にメーリングリストで症例検討、情報共有していた複数の病理医に声をかけ、入会していただいたことにも感謝です!

自分がしたかったことがPathportにあるといっても過言ではありません。

 

あとは若手に任せて、隠居がいいと思っている今日この頃です。

「一人病理医」に光明。「PathPort どこでも病理ラボ」

だいぶん間が空いてしまいました、お久しぶりです。「一人病理医」のpatholtanです。以前からお話ししている「一人病理医」に一筋の光明が差し込んだ、というお話しです。

 

「一人病理医」とは病院に勤務する常勤病理医が一人しかいない状態によく用いられる言葉です。「一人病理医」が診断について他の病理医に相談したくても、すぐにはできません。昔は標本を持って、数十Kmも先の経験豊富な病理医のところまで行き、相談していました。

 

病理診断科ではありとあらゆる臓器が全臨床科から提出され、その診断にあたっており、一筋縄ではいかないこともあります。また、免疫組織化学や分子生物学の進歩、研究の成果、画像診断機器の精度向上などにより、病理の組織学的診断名も10年前と比べて細かく分けられるようになりました。一人の病理医で全範囲を完璧にでカバーすることが難しくなっているのです。特に稀な疾患ではその傾向が顕著になります。

 

ごく最近、インターネットを介して顕微鏡の画像(以前のブログでも説明したwhole slide image (WSI))を複数の病理医で見られるようになり、その場に複数の病理医がいなくても相談、議論ができるようになりました。その名も「PathPort どこでも病理ラボ」という取り組みです。新型コロナという背景もあり、WEB会議や学会や研究会、講習会のWEB開催などが盛んになっていますが、まさにこのご時世、このご時勢にあった取り組みでもあります。

「PathPort どこでも病理ラボ」では症例検討会の他にエキスパートによるセミナーやライブコンサルテーション、講演会、若手の会なども行っています。「一人病理医」、若手の病理医はもちろん、いろんな意見を聞きたい病理医、いろんな意見を発信したい病理医にもおススメです。

 

今後、こういった取り組みがどこまで進化していくのか、その中にはいって注視したいと思います。

手術材料の病理診断

手術で採取された臓器はホルマリンで固定された状態で病理診断科に提出されます。それをどのようにして診断していくのか、順を追ってみていきましょう。

 

①病理に提出されるとまず、「受付」という業務が発生します。この材料が誰のもので、何の臓器かを病理システムや電子カルテに登録する業務です。この際、提出されたものと実際の中身が同じかどうかをチェックします。

 

②手術材料の場合、まず、そのままの状態で写真を撮ります。その後、一般的には顕微鏡で診断するのに必要十分な領域を選んで、臓器を切っていきます。これを「切出し」と呼んでいます。切り出した断面も写真を撮ります。切り出ししながら「顕微鏡でみるとこうなんだろうなぁ」と頭の中では診断を開始しています。ちなみに、「切出し」の厚さは2~5mmです。

 

③切り出した組織をパラフィンブロックという、蝋のようなものの中に入れます。このためには組織から水を抜き、有機溶媒、パラフィンに置き換えていく必要があります。この工程をパラフィンの中に組織を埋めることから「包埋」と呼んでいます。

 

④包埋した組織を、光を透過して顕微鏡でみるために、薄く(3~8マイクロメートル(μm: 1μm=0.001mm))削ります。これを「薄切」と呼んでいます。これをプレパラートに載せます。

 

⑤薄切した切片を色を付けて顕微鏡で見やすくします。基本の染色はヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)です。色を付けないと、顕微鏡でほとんど見えません。この工程を「染色」と呼んでいます。

 

⑥染色した組織切片/標本を顕微鏡でみて診断することを「鏡検/検鏡」とよんでいます。どっちとも使われると思います。例えば3mmの切出しをして、3μmで薄切された標本をみて診断した場合、たかだか1/1000しかみていない、ということになります。

 

⑦顕微鏡でみた病変を、切り出す前の臓器の写真にお絵かきすることにより、病変の範囲をわかりやすく図示します。これを「mapping」と呼び、しばしば「再構築する」とも表現されます。写真だけではわかりにくいものはmappingすべきだと思っています。たかだか1/1000しかみていないのに、さも全部見たかのようにmappingするわけです。

 

この一連の流れ、大きいもの→小さいもの→元の大きいもの、という風に病理医の思考は移っていくのです。個人的には「切出し」「粗い微分「mapping/再構築」「粗い積分だと思っています。

 

あれ、前にも同じ様なこと書いたっけ??

 

 

標本作製の工程はこちらを参照してみてください。

病理検査について (hospital.tottori.tottori.jp)

病理組織標本の作り方 高岡市民病院 (med-takaoka.jp)

組織標本作製法 | 病理診断教育支援 (palana.or.jp)

広島市立広島市民病院 診療科のご案内 病理診断科 対象医療と治療方法 (city-hosp.naka.hiroshima.jp)

スライド 1 (pref.aichi.jp)

 

微分積分に関しては、Youtubeで説明動画が複数あるので、参考にしてみてください。

病理医が読む書籍、買いたくなる書籍⑦

大、久しぶりです、patholotanです。

新型コロナ、まだまだ制圧できませんね。やはり「with コロナ」としての対応、ということに尽きると思います。政府の対応も中途半端だと思っています。基本的には「強く、短い」対処が効果的だと思っています。中途半端にだらだらするのは、成果が上がらない、勉強や片付けと一緒です。

 

さて、表題について、

⑦まず開くことはないけど、これを逃すと買えなくなる本、すでに絶版とか、マニアックとか、昔所属していた施設にあってお世話になった本をたまたま見つけたとか...

 

これは個々人で、興味のある臓器、不得意な臓器、時代によっても変わってきますね。

 

自分(現在40歳代)の場合だと、

ACKERMANのシリーズで、Neoplasms with Follicular/Eccrine/Apocrine/Sebaceous differentiation

文光堂の軟部腫瘍アトラス

文光堂の骨関節の病理診断(町並陸生 著)

Color Atras of Soft Tissue Tumors

 

ACKERMANのシリーズは赴任した病院に全部揃っていて感動したのを覚えています。「さすが、〇〇病院の図書室は違うなぁ~、これが全部そろっているんだぁ」と。自分では、Follicular/Eccrine/Sebaceousまでは集められましたが、Apocrineだけ手に入れていません。なかなか出てこないんですよね~。このシリーズは各組織型の項目の初めに印象的な絵が載っているのですが、その病気を学ぶときに非常に役に立ちます。この「絵」をみるだけでも価値があると思っています。何とかApocrineを手に入れたい、と今でも思っています。すべて揃った時にはきっと「神龍」が出て来るに違いありません。

骨・軟部はなかなか経験できない臓器の代表格です。なので、大学院生の時に何度もこれらの本を開きました。

 

自分のように本をバカみたいに買う必要はないかもしれませんが、手に取れる場所に本があるというのは非常に大事だと思っています。

 

少しでも参考になったり、共感していただければありがたいです。

ではでは。