術中迅速診断

術中迅速診断」とは治療方針の決定のために手術中に行う検査です。したがって、内視鏡で採取された材料などは普通、対象となりません。病院に常勤病理医がいるという利点の一つは、術中迅速診断の対応がすぐにできるということが挙げられます。下記の適応をみればわかるように、癌の外科的切除に大きくかかわる仕事です。

 

術中迅速診断の適応としては、
①病理診断:腫瘍の有無、腫瘍であれば良悪性の判定、組織型の決定
②腫瘍の広がり:リンパ節転移の有無、局在や遠隔部位での腫瘍の広がり
③断端における腫瘍の有無:切除範囲の決定に関与
④臓器の確認:副甲状腺など
⑤術前に予想しなかった病変の病理診断

 

術中迅速診断の適応外としては、
①乳腺のpapillary lesionの良悪性の判定
甲状腺のfollicular lesionの良悪性の判定
③リンパ節でのmalignant lymphomaの診断
④消化管ポリープでの悪性像の有無
⑤石灰化や硬組織(骨・歯)、脂肪織
結核症などの感染症を疑う場合
⑦明らかな異物


患者の病巣の一部から直ちに標本を作製し、短時間でその病理診断を手術室に報告します。(この間、病理医は気がたっていますので、近寄るときには要注意です。)


新鮮標本は軟らかく、薄切できないためクリオスタットとという冷却装置ですみやかに凍結し、薄切標本を作製・染色し直ちに検鏡します。


限られた時間、所見から診断を下す必要のある非常にストレスのかかる検査です。
標本の状態や時間の制約のため、確実な診断が困難なことが時にあります。その場合は何がわかって何がわからないのか、可能性のあるものはAとB、などと連絡しています。

 

術中迅速診断で用いる凍結切片では永久標本に比べて、①核は大きく見え、②核分裂像が多く見えるとされています。つまり、悪そうに見えるということになるのです。


そのため、術中迅速診断の結果が永久標本での診断と異なることが時にあります。


努力はしていますが、「術中迅速診断は最終診断ではない!!」ということをわかってほしいのです。