手術材料の病理診断

手術で採取された臓器はホルマリンで固定された状態で病理診断科に提出されます。それをどのようにして診断していくのか、順を追ってみていきましょう。

 

①病理に提出されるとまず、「受付」という業務が発生します。この材料が誰のもので、何の臓器かを病理システムや電子カルテに登録する業務です。この際、提出されたものと実際の中身が同じかどうかをチェックします。

 

②手術材料の場合、まず、そのままの状態で写真を撮ります。その後、一般的には顕微鏡で診断するのに必要十分な領域を選んで、臓器を切っていきます。これを「切出し」と呼んでいます。切り出した断面も写真を撮ります。切り出ししながら「顕微鏡でみるとこうなんだろうなぁ」と頭の中では診断を開始しています。ちなみに、「切出し」の厚さは2~5mmです。

 

③切り出した組織をパラフィンブロックという、蝋のようなものの中に入れます。このためには組織から水を抜き、有機溶媒、パラフィンに置き換えていく必要があります。この工程をパラフィンの中に組織を埋めることから「包埋」と呼んでいます。

 

④包埋した組織を、光を透過して顕微鏡でみるために、薄く(3~8マイクロメートル(μm: 1μm=0.001mm))削ります。これを「薄切」と呼んでいます。これをプレパラートに載せます。

 

⑤薄切した切片を色を付けて顕微鏡で見やすくします。基本の染色はヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)です。色を付けないと、顕微鏡でほとんど見えません。この工程を「染色」と呼んでいます。

 

⑥染色した組織切片/標本を顕微鏡でみて診断することを「鏡検/検鏡」とよんでいます。どっちとも使われると思います。例えば3mmの切出しをして、3μmで薄切された標本をみて診断した場合、たかだか1/1000しかみていない、ということになります。

 

⑦顕微鏡でみた病変を、切り出す前の臓器の写真にお絵かきすることにより、病変の範囲をわかりやすく図示します。これを「mapping」と呼び、しばしば「再構築する」とも表現されます。写真だけではわかりにくいものはmappingすべきだと思っています。たかだか1/1000しかみていないのに、さも全部見たかのようにmappingするわけです。

 

この一連の流れ、大きいもの→小さいもの→元の大きいもの、という風に病理医の思考は移っていくのです。個人的には「切出し」「粗い微分「mapping/再構築」「粗い積分だと思っています。

 

あれ、前にも同じ様なこと書いたっけ??

 

 

標本作製の工程はこちらを参照してみてください。

病理検査について (hospital.tottori.tottori.jp)

病理組織標本の作り方 高岡市民病院 (med-takaoka.jp)

組織標本作製法 | 病理診断教育支援 (palana.or.jp)

広島市立広島市民病院 診療科のご案内 病理診断科 対象医療と治療方法 (city-hosp.naka.hiroshima.jp)

スライド 1 (pref.aichi.jp)

 

微分積分に関しては、Youtubeで説明動画が複数あるので、参考にしてみてください。